フランクフルト食い倒れ旅行記

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一人でドイツへ旅立つ。お世辞にも可愛いとは言えない、温かさだけを極めたダウンジャケットとすべてを詰めた南京錠付きのグレゴリーのボロボロのリュックとショルダーバッグにいつものわたし。

授業の課題であるイブセンの『人形の家』をKindleで読みながら向かう。こんな時に限ってイヤホンの片耳が突然聞こえなくなる。空港で安かった中国製のイヤホンを買ったが、また一瞬で壊れた。

物価の馬鹿高いコペンハーゲンの大好きなエスプレッソハウスで、Signature melted hot chocolate を飲んで、飛行機は爆睡し、無事フランクフルトに到着。曇り。

空港は大きくて新しい。チケットの購入に経由地が必要でよくわからず、現地人のお姉さんに教えを請いてなんとか電車に飛び乗る。市内までは5ユーロ、30分くらいで行けて嬉しい。

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時間があったので、ひとりでシュテーデル美術館へ向かう。マイン川の鉄骨の吊り橋を渡る。オフシーズンなので外観は修復していたが、各所のシンメトリーが美しい。閉館間際に駆け込んだので急ぎ足だったが、フェルメールの『地理学者』など、有名作品を中心に見回ることができた。

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初めてムンクの絵を見た。叫んでなくてもムンクなんだ、と思った。留学に来てからいくつかの国の美術館を回ったが、やっぱりモネが好きなわたしは胸を張って日本人代表。

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どうやったらこの磨りガラスの向こうに行けるんだろう、と探り探り近付いて行ったら、それは鏡で、写っているのはわたしが立っている空間だった。

地下はフロア全体がモダンアートの展示になっている。あまりモダンアートを鑑賞したことがないので面食らったが、刺激的だった。

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もう日も暮れた夜の街を歩き続けた。なぜか人は皆無。東京駅近辺を一人歩いていた12月の夜道を思い出して泣きたくなった。東京が好きだ。そして一人夕食を食べに、Römer というレストランへ。家庭的な、定食屋さんのような店内。赤チェックのテーブルクロスは世界共通なのか。一人で入るのちょっと緊張した。

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お腹も空いていたし、一人で旅したこの一日に祝杯を上げるため、グレープフルーツのミックスビアと、シュニッツェルと、フレンチオニオンスープを頼んだ。ちゃんとビールを頼まないのは邪道な気がしたが、やっぱりドイツのミックスビアが大好き!オニオンスープの底知れぬ優しさに救われ、そして溶けたパンとチーズに満たされる。一杯のスープで感情が1セットくらい回転する。

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シュニッツェルはとにかく大きくて付け合わせのポテトも頼んでしまって食べきれないかと思ったけれど、気合いで食べきった。美味しかったけど、シュニッツェルの味の違いがあまりわからない。ソースをこってり系にしてしまったので胃が大変だった。ずっと我慢していた『ハイキュー』36巻を読んで、定食屋の片隅で一人むせび泣いてしまって完全に怪しいアジア人だった。

そこから一人電車に乗り、また夜道を歩いてホテルへ。合流予定の先輩が到着するまで休憩し、もう遅いしそのまま寝ようと思っていたら、「ここまで日本から長い時間かけてはるばるドイツまで来たのにビールを飲まずに寝るなんてありえないよね」というLINEが来て、自分の気力と体力を信じパブへ。深夜で空いている店がなかったので、ドイツでアイリッシュパブ。煙草の匂いでけむたい店内、混み合っていた。

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グレープフルーツビアと、なぜかカンパリオレンジやらギネスやらを飲み、チキンウィングとポテトを食べた。激辛チキンウィング。ずっと好きな人がいて、失恋して、そこから一年大丈夫なような気がしていたけれど、「本当は大丈夫じゃなかったんだよね〜まだ全然好きだって気付いたんだよね〜」という話を聞く。言葉に抑揚がなくて、当たり前みたいにポーカーフェイスで話すからいつも笑ってしまう。真顔で間延びした声でキッパリはっきり話す人で、わたしはいつもゴーイングマイウェイを体現した彼女の意志の強さと自信に惚れ惚れする。「どうしよう」じゃなくて、「どうしようもないよね。わたしの好きにするわ」と、電話したくなったら電話して、飲みに誘って、思いのまま生きる彼女が好きだ。2時過ぎに帰宅。

 

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昨日遅かったため、観光するのは今日しかなかったけれど、昼過ぎまで二人して寝た。市内まで歩き、Schlemmermeyer というお肉屋さんがお店の横のスタンドでやっている有名なスタンドへ。

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白のフランクフルトと、レバーケーゼ?とフライシュケーゼ?という、塩味強めなミートローフ的なものと、豚皮の揚げ物を頼む。フランクフルトとミートローフは、パンに挟んでもらうことができて、このパンがまた美味しい。豚皮は、カリカリで苦くて中身がなく、わたしには何かの間違いのように思ってしまった。だけど、フランクフルトとミートローフは絶品だった。特にミートローフはやわらかくて最高。ドイツでソーセージ食べようと思っても、パブやレストランに入らなければいけないイメージがあったので、お酒を頼まずとも美味しいものを街中で食べ歩きできるのが嬉しい。

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お腹はいっぱいだったが、何にせよ今日1日しかないので甘いものも諦めきれず、Wacker's coffeeという超行列の老舗喫茶店でコーヒーを飲む。わたしが唯一所持しているドイツ語は、Milch kaffee だけなので、いつもカフェではドヤ顔で「ミルヒカーフィー」と頼んでいる。明らかに観光客なので、大体は英語で返されるか、万が一ドイツ語で話してくれたとしてもそこから先はまったく話せず、ドヤ顔でドイツ語を発した3秒後には「Sorry?」と返さなければいけない始末。

レーマー広場に行ったり、鉄の橋を渡ったり、有名な大聖堂に向かったはずが全く違う福音教会に入っていたりした。少し歩いたところで、晩餐前の腹ごしらえに Leib&Seele へ。昼にソーセージを食べたものの、ちゃんとした、ビール×ソーセージの組み合わせも堪能しなければ、やはりドイツを去れないのである!

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フランクフルトで有名らしいアップルワインを頼んでみた。グラスに格子柄の切れ込みが入っていて、半透明の黄色が反射して綺麗だ。アップル&ワインなんて最高じゃんか!と意気揚々と500mlを頼むも、酸っぱすぎる白ワインという感じで、甘さ0酸っぱさ100に振り切っていってあんまり好みではなかった。500mlも頼んだことを即座に悔やむが、酔いが回ってきて意外とごくごく飲んでしまった。

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次は、Sion の Kölsh を頼む。どうやらケルン地方のケルシュビールというものの一種らしい。なんとこれが、ビールなのに甘くて爽やかで、絶妙なバランスで、一瞬でわたし史上最強のビールに認定された。このはちみつみたいに鈍く光る黄金色の奥行きがたまらない。ラガーのあの馬鹿みたいな明るい黄色が軽薄に感じられちゃうね。うーケルンも行きたくなっちゃうよ。また飲めたらいいな。

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お酒がぐんぐん回ってきたので、次はミックスビアに落ち着く。日本でもコークハイが大好きなわたしは、ドイツでもいつもコーラを混ぜてしまう!めちゃくちゃ美味しい。日本でももっとミックスビア流行ってほしい。コーラの割合多めなものがわたしは好きです。この辺りで酔いが回って、暴力的な眠気にダウンし、ふと目を閉じたつもりがそのまま30分ほど眠りに落ちてしまった。目を開けた瞬間に先輩が間髪入れずに「お店の人にも周りの人にもやばい目で見られてたよ。本当に迷惑だからやめたほうがいいよ」とストレートを打ち込まれそのままノックアウト。すみませんでした。

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そして念願のソーセージの盛り合わせを食べた。お兄さんに「とにかくおすすめのソーセージが食べたいんだけど、どのメニューがいいかな」と聞いたら、「オッケー任せろ!」と笑顔で厨房に消えていって用意してくれたもの。

一人5種類くらいのソーセージを満面の笑みで平らげた。どれも素晴らしく美味しくて素晴らしくビールに合った。今回の旅で一番好きなお店かも。白いソーセージに縦にナイフで切り込みを入れ、そこから指でつるんと向くと皮がむけるのだと、ベルリンに遊びに行った時に後輩が教えてくれた。現在鋭意習得中であり、何気にこれが一番好きな種類のソーセージ!甘めのマスタードがまた美味しい。

そこから歩いて、今日の締めの Apostel へ。小さな灯りだけが灯る、薄暗いパブの地下に案内された。小声で囁きあう恋人たちのためではなく、この火を絶対に消してはいけないと必死な囚人のための薄暗い灯りだった。お世辞にも雰囲気がいいとは言えなかったが、もう飲みすぎているので何でもいいのである!

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またもやわたしはミックスビアを飲む。コーラを混ぜるにはこのビール、スプライトにはこれ、という王道が決まっているらしい。そしてコーラを混ぜたビールのことを「ディーゼル」と呼ぶらしい。ディーゼル

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ローストビーフは冷え切っていたが、サワークリームに多種多様な草が混ぜられている、お姉さんおすすめのグリーンソースはさっぱりしていていい感じだった。ローストポテトはもちもちで、その店の中では美味しさが肉をも超えていた。こっちに来てからじゃがいもにもレベルがあるということを知った。

夜、ほろ酔いでハッピーに部屋に帰るも、タオルをもらいに行った時にフロントのおじさんと思わぬ戦いに発展し敗北。イライラして部屋に帰ったら、「タオルもらえないとかまじ無理行ってくるわ」と先輩が旅立つ。英語わかんないから紙に書け、と言われ、タオルの綴りを間違えるという痛手を負いながらも見事タオルを獲得し帰還。

 

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21歳の誕生日を迎えた。フランクフルトで迎えるハッピーバースデー!とは言っても、朝一の飛行機ですっぴんのままコペンハーゲンに帰り、フランクフルト旅行は無事終了した。

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2.5L ほどのビールと美味しい食べ物を胃になみなみと注ぎ続けた旅。「観光って疲れるじゃん。ドイツに集合してソーセージとビールだけ好きなだけ食べて帰ろ。観光は絶対やめよ。」と、なかなか言いづらい最高なポリシーを貫き、この食い倒れ旅行を遂行してくれた先輩よ、ありがとう。