HYUKOHを訪ねてベルリン旅行記

3/6(水)

朝一でベルリンに向け飛び立つ。コペンハーゲンからベルリンまでは45分で着く。どんな飛行機でも爆睡してしまうのに、ねむりきれないくらい一瞬だった。

二度目のベルリン!以前来たときに惚れ惚れしてしまった、こじんまりとした丁寧なお店が並ぶ、空気の澄んだ街で腹ごしらえ。

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おしゃれなカフェで、Milch Koffee と エッグベネディクトを頼んだ。分厚くてカリカリのパンだった。旅先での朝はいつだって特別なエッグベネディクトを探してしまう。素晴らしい朝ごはんに出会えた日は素晴らしい一日になると信じている。

夜のライブのチケットをドイツのサイトで買って、Eチケットが届いたので大丈夫だろうと高を括っていたら、ドイツ語で「A4の用紙に印刷しない限り無効」と書いてあることに直前に気付いて焦る。

海外ではどこで印刷できるの?!コンビニでも無理だし?!と途方に暮れていたら、コピーサービスなるお店を見つける。コンピュータと印刷機が並んでいて、カウンターで何をしたいのかを説明すると番号を割り振られ、そのコンピュータを使って印刷した後、カウンターで支払いをするというかなり原始的なシステム。ライブ前にちゃんと印刷できたことに安心しつつ、24時間灯りをともしてくれていた家の近くのコンビニのことや、お風呂上がり深夜にスウェットで通っていた22号館の無料コピー機のことを思い出していた。

トラムを乗り継いでホステルに着き、ドイツ人の友達ふたりと合流。12月の今生の別れを思い出して、また会えたことが嬉しくて、そしてちょっとくすぐったかった。真面目さとおちゃめさ、そして一人の世界と二人の世界をそれぞれちゃんと持っているキュートなふたりだ。

 

お昼ごはんを食べに、アレクサンダープラッツ付近の、SOY というベトナム料理のヴィーガンレストランに行った。ベトナム料理を、生まれて初めてドイツで食べるという巡り合わせ。ヨーロッパのアジア料理屋に行くと、アジアのどんな洒落たお店とも違う、まったく別の何かが模倣とは別の方法でアジアを表現しようとして混じり合った不思議な違和感にいつも驚かされる。机の濃い色の木の温もりに触れて、わたしはベトナムに行ったことがないし、何か近い記憶があるわけでもないのになぜか懐かしいと思った。

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ランチで選べる付け合わせ。春巻きのことはスプリングロール、生春巻きのことはサマーロールを呼ぶと知った。サマーロール。中身をぎっしり詰める丹念さが美しいと思った。甘いピーナッツにつけて食べる。スウェーデン料理もそうだけれど、ごはんに甘い物をつけるという感覚がよくわからない。

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初めて食べたフォーは、素朴よりも優しい味をしていた。惜しみなくのせられた、日本で食べたきりの豆腐や野菜や、ヨーロッパのものとは明らかに違う出汁が胸に沁みた。沁みながら、むしゃむしゃ食べた。

ライブ会場が開くまで一時間半ほど寒空の下凍えながら待った。かなり待った。8時にライブが始まると聞いていたけれど、それは間違っていたみたいで8時半に彼らは登場した。かなり疲れてしまっていたけれど、ああいうライブハウスのライブに行ったのは数年ぶりで、始まりと同時に自分が高揚していくのを感じていた。

 

HYUKOH  24: How to find true love and happiness  in Berlin

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MCはほとんどなくて、ボーカルのヒョクが一言二言、英語とドイツ語で挨拶をして、他はずっと音楽に浸る時間だった。一時間くらいの短いライブだったけれど、ひさしぶりに生の音のお腹の奥に響く感じとか、自分とアーティストと、そして他のお客さんと同じ一つの空間にいるんだという実感に、やっぱり音楽っていいいなぁと改めて感動してしまった。

わたしは彼らの音楽が好きだけど、韓国語はわからないし歌詞の意味も把握できていない。裏返せば、彼らが何を言っているのか何を歌っているのかわからないのに彼らの音楽が好きだと思っている。お客さんはドイツ人もヨーロッパ系の人も、そして驚いたけれどわざわざ韓国から来ている人も多くて、言葉も文化も違うけれど、このベルリンの夜にみんなが一つの方向を向いて一緒に歌ったり聞き惚れたりして、みんなが一つのグループが生み出す音楽を好きだと思っていて、これって多分すごいことだ。

彼の芸術みたいな声と彼らの音楽に包まれながら、たとえばこの歌の歌詞が日本語だったり、彼らが日本に生まれていたら、あるいはまったく別の国に生まれていたりしたら、どうなっていたんだろうなーということを考えていた。そんなことを考えるのはナンセンスかもしれないけれど、彼らの霞の先に消えそうな透明感や、それでいて芯のあるエモーショナルな音はどこから生まれているのか、知りたいと思った。

TOMBOYを生で聴けて嬉しかった。Paul は聴けなかったけれど相変わらず好きな曲。みんなで歌って、ちょっと間違えて、みんなで笑った LOVE YA! もよかったな。


HYUKOH(혁오) - TOMBOY(톰보이 뮤직비디오) M/V


HYUKOH(혁오) - LOVE YA! M/V

日本でもツアーやったり、ネバヤンと対バンしたりしているらしい。あべさんがヒョクとプライベートで遊んで、中目黒の川沿いで「LOVE YA!」を聞かせてもらって「衝撃的だった」と言っているインタビュー記事がわたしには衝撃的だった。映画のワンシーンみたいだ。すごい音楽だ、と思う。静けさの中でも激しさの中でも泣きたくなる。

 

3/7(木)

きのうは体力と感受性が爆発寸前で、目を閉じた瞬間に意識が落ちていった。ゆっくり寝て、チェックアウトして、朝ごはん。タイトになりがちな旅のスケジュールに朝ごはんの時間を組み込んでくれる人のことが一人残らず好きだ。

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Tempo box というカフェで、Milch Koffee と、Sweer Breakfastというセットを頼んだ。フルーツサラダと、バニラヨーグルトと、ヌテラ付きワッフル。小学生で出会ってから、ヌテラへの愛は霞んだことがない。フルーツが軒並みかたくて甘くなくてちょっと悲しかった。

そこから、マジック博物館と科学館と迷ったけれど協議の結果、スパイ博物館へ行くことになった。スパイの博物館?!という感じだったけれど、世界中のスパイの歴史や、スパイのための道具や展示がたくさんある、めちゃくちゃに楽しい場所だった。幼い頃『スパイキッズ』が大好きで何度も見て、今でも熱心に『ミッションインポッシブル』を追っているわたしは完全にテンションが上がってしまった。

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『イミテーションゲーム』を見てから、恐れつつ密かに興味を持っていたソ連エニグマや、映画の中なんじゃないかと思ってしまうような盗撮用コンタクトレンズ、パイプの銃、トランプの地図など、嘘みたいな本物に思わずテンションが上がってしまった。とはいえ、様々な血生臭い歴史も学べる展示で、見応えがあった。現実は小説よりも奇なり。

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赤いオーケストラなんてなかったという説明。

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ブリッジ・オブ・スパイ』で映画になった、捕虜交換のスペクタクル模型。

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誰もが一度は憧れるであろう、赤外線トラップを潜り抜けるアトラクションもあった。挑戦したものの初心者用のステージもなかなかに難しくて、スパイには到底なれないであろう鈍臭さを見事に見せつけてしまった。

そしてふたりと別れた。こっちに来てからの出会いと別れはいつも簡単で、また会えるといいなと祈ることしかできないけれど、でも本当にこのふたりと出会って仲良くなれてラッキーだった。

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飛行機の時間があったので行かなければならなかったけれど、やはりドイツに来てビールとフランクフルトを食べずに帰ることはできない!という使命感に燃え、アレクサンダープラッツ駅の中に入っている、curry wurst express に駆け込む。500ml の瓶ビールとカリーヴレストにパン。一人4.5ユーロで買える幸福。その名も perfect duo。