紆余曲折の末に敢行してまいりました、人生初の親孝行旅行 in 九州。母とふたりで初の母娘旅行のはずが気付けば父も参戦し、近場で1泊くらいの予定がまさかのレンタカーで3泊4日九州を駆け巡る壮大な旅程になり、かと思えば実家の兄がコロナに感染してしまい、まさかの前日キャンセル…?!と直前まで心を掻き乱された波乱万丈の今回の旅。
家族旅行も近隣の県しか攻め入っていなかったスモールスケールな我が家。それが突然本州を飛び出て、向かうは父が初めて降り立つ九州の地、しかも欲張り3県踏破。両親ももう若くない上にまったく旅慣れしておらず、旅のプランニングと命運はすべてわたしの双肩に…という感じで、(なんかもう全体的に)大丈夫か?!と若干緊迫感に満ちていたものの、まずは何事もなく無事帰ってこられたことに盛大な拍手を。
1日目:地獄巡りと砂風呂でほかほかな走り出し
両親と羽田で待ち合わせして、初日は大分へ。お恥ずかしながら地獄巡り=入る方の温泉巡りだとしっかり勘違いしていたので、絶対に入れない方の温泉めぐりであるということを学んだ。ふたつ巡っただけで一同大満足。
大分では、母とわたしがこの旅で一番楽しみにしていたと言っても過言ではない竹瓦温泉の砂風呂へ。素っ裸に浴衣を着て、あったかい土に埋めてもらって、終わった後は浴衣のままシャワーを浴びて砂を落とす、という今後一生経験することはないであろう常軌を逸した肌感覚と体験に大興奮。
湿った土って、想像の何倍も重いんだな…ということを身をもって実感した。あたたかい土に埋もれていると、汗がだくだく出てきて、ふくらはぎに心臓あった?ってくらい足先までドクドクに血流が巡り出して、重い土を押し退けて地上に戻ると、信じられないくらい体が軽い…!なんじゃこりゃ!はちゃめちゃに気持ちよかった。元来サウナより岩盤浴派だったが、砂風呂>岩盤浴>サウナの序列が一瞬でできあがってしまった。
これからの人生、両親と川の字で土に埋められることはきっと二度とないでしょう。
両親の生活リズムに合わせて、毎日早寝早起きというめずらしく健康的な旅だったので、かなり朝が早かった。そのおかげで見られた美しい朝焼け。宿の窓が大きく開けていて、絵画みたいな贅沢な借景。
温泉の街ということで、別府の街中で蜃気楼や煙を見かけては「あれは湯けむりか?!」と前のめりに探し出す湯けむり探偵こと父も、見下ろす街の至るところで昇り立つ湯けむりを見られてご満悦のようでした。
2日目:もし天国があるとしたら阿蘇みたいな場所がいい
色んな友達から「絶対あなた阿蘇好きだと思う」とたびたび言われ、そんなにわたしが好きそうな街って一体…?!と胸を焦がして早2年ほど。そんな望郷の地に両親と行けるなんて、ありがたい話だねえ。
別府から、通り過ぎる人も車もいない田舎道を遠路はるばる駆け抜けて、いよいよそんな謎めいた憧れの地・阿蘇に上陸。
早速お目見えできた阿蘇山。360°山に囲まれた地で暮らす、山への審美眼は磨かれているはずの我が家も色めき立つ、なかなか魅惑的なシルエット。
一番の目玉(?)と思われる、草千里ヶ浜。なんて気持ちいいのでしょう!もし天国があるとしたらこんな場所であってほしいと思う。残念ながら馬の放牧は一頭も見れなかったけれど、馬の面影(糞)はそこかしこに感じることができた。
車で阿蘇山の火口にも接近。風向きの関係で火口付近は一帯封鎖されており、残念には思いつつも、噴火の際のシェルターや仕掛けを間近で見たこともあり、たしかに活火山なんだなあという畏怖を覚えた。
雄大ながら、どこか懐かしさを感じるような阿蘇の原風景に打たれて、心がなんだか和らいだ気がした。尖っているところがない、まあるい感じの気持ち。
少しの名残惜しさを感じながら、この日のうちに熊本市内へ。想像の何倍も都会なことと街中を埋め尽くすくまモンの物量に衝撃を受ける。熊本市役所から夜景を見たり、お堀をお散歩したり、路面電車に乗ったり、親戚一同へのお土産にくまモングッズを爆買いしたりと、熊本の夜の空気を楽しんだ。
3・4日目:熊本城→太宰府天満宮→博多へ怒涛の北上
朝一番で、母が並々ならぬ思いで恋焦がれていた熊本城へ出陣。あまりの気合いで開門20分前には現地に着いてしまい、城の前で暇を持て余し、開場の儀なる簡単なセレモニー的なものにも参加してしまうという張り切りぶり。開場前に着いちゃうの、もうディズニーでもやらないよ。
熊本城、はちゃめちゃに敷地が広い。ド晴天の猛暑日、歩くだけで汗が止まらず正直城どころではない瞬間も数多くあったが、熊本城の歴史や、復興の道のりを窺い知ることができて、充実した時間だった。歴史に明るくないが、加藤清正がとても偉大な人物であることはわかった。
猛暑のなか歩き疲れ早くも体力の限界を感じるなか、とはいえまだ午前中であるという三文の徳加減に驚きつつ、そのまま車を飛ばしてまたしても母念願の太宰府天満宮へ。
本殿が改修している間、設置されているという仮殿。梅の木伝説になぞらえたコンセプトで、梅の木が一晩で飛んできて、この地に根を生やす仮住まいの様子を表現しているらしい。あまりに素敵で、仮殿と言わずこのまま本殿にしちゃえば…?!と思わずにはいられない。物語の一瞬を切り取ったような、鮮やかな世界観。
母は、わたしがジブリパークのお土産であげた御朱印帳を、この旅行でおろそうとしっかり持参してくれていたが、しっかり車に置き忘れて初記帳は叶わず。
昔食べた味が忘れられずずっと恋焦がれていて、なんなら太宰府天満宮よりも楽しみにしていた梅ヶ枝餅。賞味期限が短くて、東京に持ち帰りづらいのが憎い。ほかほかの状態を噛み締めて食べた。やっぱり思い出になる美味しさ!
さらに母の希望で、お隣の九州国立博物館へ。天井が高くて広々としていて、木の組子のような建築がとっても素敵だった。大迫力の山車も!
ボランティアでガイドの方がついてくださってありがたかった。たくさん国宝を見た。
その後、ついに最後の目的地である博多に上陸。この日は移動距離も歩数も果てしなかったうえに猛暑だったので、もう疲れ果ててヘロヘロになって、温泉が沁みた。ただ、奇しくもこの日は一同ドハマりしていた『降り積もれ孤独な死よ』の最終回だったので、そんなにもくったくたで今すぐにでも眠りたいなか、全員でしっかり目をかっぴらいて決死のリアタイ。最後の夜にふさわしい。
最終日は飛行機の時間まで近場でのんびり、ということになり、観光地っぽかった福岡タワーへ。昔から薄々気付いてはいたのだが、こういうタワーに登ったり高いところから景色を眺めたりすることに、あまり喜びを感じないタイプなのかもしれない。
悪天候で飛行機が羽田に降りられないかも…という一報が入り、流石に4日目で全員疲れていたので、2本早い便に繰り上げてもらって、空港でお土産を買い込んだのちに大団円で旅は終わり。
旅のごはん記録
九州といえば食の宝庫。両親にも喜んでもらえるように、これまで培ってきた美味しいものセンサーと審美眼を総動員し、いつも以上に腕を奮ってリサーチして臨んだのだが(当たり前にリサーチ量は食>>>>観光地)、正直なところ、感動レベルの食事は一食のみ。情けない話だ…。せっかく九州に行ったのになんたる不覚。
いや、九州もお店も何も悪くなくて、どれもとっても美味しかったし、わたしも最善を尽くしたのだが、もう一歩高みを目指したかったし、実際目指せたな、というアスリートとしての視点からの反省です…。
その中でも特に思い出に残っている精鋭たち↓
やま康のメガ赤牛丼(阿蘇)
これがどうしても食べたくて、決死の覚悟で予約を取りに行った。温泉卵×ステーキ×温泉卵×白米という無敵の集合体に辿り着けて幸せ。見た目的にはこの丼が楽しいけど、お肉の質的には母が頼んでいた赤牛のステーキの方が美味しかった。
玉名SAの焼きそば(熊本)
「玉名といえば次に来る言葉は…焼きそば!」というGoogle Mapのグルメレポーターの評に誘われ、玉名ラーメンと迷いに迷った末、焼きそばをチョイス。富士宮焼きそばもそうなのだが、もちもち中太麺のソース焼きそばが好きすぎる。もっと洒落たものを好みたいところだが、ステーキ丼然り、いくつになってもわんぱく男飯が一番…。
けんぞうの馬刺し(熊本)
わたしの地元も割と馬刺しを食べる文化があるのだが、こんなに分厚くてサシの入った馬刺しは初めて!個人的に好きなタテガミ(白くてコリコリしたやつ)も一緒に頼んだのだが、両親には重すぎるとのことでウケず、申し訳ない。
もつ鍋一藤(博多)
今回の旅で一番悩んでお店を決めて、そして一番感動した食事。博多のもつ鍋、名の知れたお店も知らないお店も押し並べてGoogle Mapの評価が5付近で、さすがに激戦区の真髄を見た気がする。
初めての一藤、味噌の鍋ってどうしても重いイメージがあるのだが、旨味とコクはしっかりありつつもまったく重くない仕上がりに感動。もつは上品な甘みで、これぞ大人のもつ鍋…!という感じだった。両親も感激していて、父は今でも実家で「あのもつ鍋は美味かったな…」とこぼしているらしい(母談)
7:30の食堂おわんの朝ごはん(博多)
最終日の朝はホテルの朝食をつけず、近所の目をつけていた和食屋さんに。早朝に予約が取れるってありがたい。土鍋で炊いた粒が限りなく際立ったごはん、ついにわたしのHARIOを超えてきた…。なかい(?)というお店のこだわりの明太子、どのお店で食べた明太子よりも美味しくて、お土産に買って帰りたいくらいだった。朝からお腹も心もかなり満たされる贅沢な食事。
番外編:オーベルジーヌの自販機(羽田)
両親と羽田で別れてバスを待っていた時に偶然見つけたオーベルジーヌの自販機。羽田でオーベルジーヌの冷凍のカレーを手軽に買えるなんて…!九州旅行のどの瞬間をも凌駕する驚き。
オーベルジーヌの甘めの欧風カレーが大好きで、何度だって食べたいのになかなかありつくのが難しい逸品だったので、こんな抜け道があったとは…と神に感謝しながら迷わず購入。電子レンジで温めるだけで食べられて、お肉は柔らかく、ルーはあの味そのまま、シンプルに美味しすぎる。今後羽田に行くたびに買ってしまいそうで怖い。
お土産紹介
THE 九州の調味料・さしみ醤油と、ちょうどポン酢を切らしていたので試しにカボスぽん酢を買ってみる。さしみ醤油、あの甘さが大好きなんだけど、現地でも薄々感じていたが何を食べても醤油の味になってしまうな…。
博多ラーメン、博多滞在中に2軒目で締めに食べに行きたかったけれど、こちとら平均年齢48.6歳の御一行のため、お腹が期待に応えられず泣く泣く断念。その無念を晴らすために、空港で強い意志で買ってみた。色んなお店のがあってよく分からなかったので、チョイスは適当。
九州国立博物館で、「ママが買ってあげるからお揃いにしよ🎶」と買ってくれたショッキングピンクの石人ハンカチ。石人ハンカチ…?
やはり外せない通りもん。美味しいことはもちろん分かりきっているのだが、職場とかでお土産にいただくたびに「こんなに美味しかったっけ…?」と毎回惚れ直している。
もう一つ、「九州の新しい銘菓になりたい!」という夢を声に出すタイプの健気なPOPに胸を打たれ、いちじくのお饅頭も買ってみた。自称・通りもんのいちじくver.とのことで(それ言っちゃっていいのか?)こちらも上品な甘さで美味しかった。
総括
贅沢に九州3県を車で走り回った4日間。もちろん他の県にもそれぞれの魅力はあるのだけれど、なんだか九州は特に、土壌の豊かさや歴史と文化が大地に根付いている感じがして、いい場所だなあと思った。もしわたしが九州出身だったら上京していないかも。
交通機関は安いし便利だけど疲れるので、今回の旅程的にも家族旅行的にも、レンタカー乗り捨てはめちゃくちゃいい選択肢だな〜〜というのは大きな発見。いつもは最安値の車を適当に借りるのだが、今回は父のたっての希望でカローラツーリングを指定。その駆動と走りやすさに、父が運転中に(マジで)100回くらい感動の声を上げ続けていたので、車種指定してよかった。
何よりも、初めて両親と旅行に行けて、二人ともとても喜んでくれたことが一番の思い出。健やかで和やかで、この世にこれほど温かい時間はないであろう旅だった。母親はハイテンションでストレートに喜びを表現するタイプで、父親は寡黙で一見表には出ないのだが、内実はかなり喜んでいて、ぼそっと「光のおかげで本当にいい旅になったな…」とか呟くツンデレタイプなので、甘いとしょっぱいが交互にくる感じで、我が親ながら親孝行しがいがあって大変ありがたい。
母と温泉に浸かっていた時に「これから辛いことがあったらこの旅行を思い出すね」と言われた。去年母も両親と妹と数十年ぶりに沖縄に家族旅行に行けて、その時に(わたしにとっての)祖母も、ずっと幸せだ幸せだと喜んで、いつか祖母が亡くなる時には、その旅行の写真を棺桶に入れてほしいと言っていたらしい。
支えになるような美しい思い出はあればあるほどいいし、作ろうと思って作っていきたいと思う。思い出をつくるために生きているし、思い出に生かされているな〜〜と感じる日々なので。