隙間を埋める日記

実家ニート生活を抜け出して東京に進出したのが7月の終わり。一日ずつ一週間ずつ、東京の空気は肌から当たり前に浸透して、ああそうだったよねって思い出したように細胞がまた活動を始めて、あのスウェーデンでの一年間が嘘だったみたいに昔と変わらず東京を生きている。

気付くともうどこにもいない夏は、インターンに行ったり、インターンに落ちたり、美味しいものを食べたり飲んだり、友達と再会したりして過ごしていた。前回の日記でやぶれかぶれに就活から垣間見える社会というものの実体に怯えていたわたしですが、意外とちゃんと就活生になりかけている。逃げるよりも向き合うほうが楽だと思えてきた。

まだ本選考が始まっていないからかもしれないけれど、インターンなどで出会う人たちとの一期一会は思っていたよりもかなり楽しい。THE私大文系で国公立や理系院生との接点がほとんどない大学生活だったから、自分や自分の近くの領域とまったく違う世界での生活や研究や考え方がとても刺激的でわくわくする。

相変わらず自分にがっかりすることはたくさんあるけれど、花火も浴衣もフェスもない文字通り日々を駆け抜けるように必死だった濃密なこの夏をわたしは結構誇らしく思っている。だけど実家にいた頃から今この時まで、冗談でもなんでもなく一週間とか二週間単位で気付くとごっそり時が過ぎている感覚で(実際ストレスか何かでまつげが部分的にごっそり抜けて泣きました)、メンタルというか生命力みたいなものを消費というか消耗している感覚がすごく強い。そのことに危機感を覚えることもあるけれどどうしようもできなくて、少しでも心を強く保つために、週末は相変わらず底の方まで沈みながら眠り続けている。

 

この日記を更新していない間に就活以外で何をしていたかというと、まずはお酒を飲んでいた。留学中にビールが大好きになってしまったもので、お酒への愛と脆弱なアルコール耐性の隙間を常に攻めながらお酒を飲んでいた。新宿の野外上映祭や地元のワイナリーツアーやビアガーデンや日本酒バーに嬉々として出没していた。太った。美味しいものが好きだというシンプルかつ揺るぎない愛を強い気持ちで再確認しながら、美味しいものに囲まれた生活をしている!

あとは、ディズニーに何度か行ったり、バーベキューで唯一の夏の匂いに浸ったり、餃子パーティしたり。にわか最前線でラグビーを応援してパブリックビューイングにも行った。ここ一ヶ月では、マンモス展と東京国際映画祭と偶然誘われたミセスグリーンアップルのライブに行った。忙しいけれど、疲れも含めて楽しい日々です。

バイトも、留学前に働いていたところで再開した。tumblrを見返したらバイトをやめた日のセンチメンタルな日記が残っていた。

ドアを閉めて出て行く時、「一年経ったら、気まずくてもう来られないと思うかもしれないけど、全然そんなことないからね」と言ってくれた。大人は時の流れの重みを知っている。一瞬で過ぎていくから軽いなんてことはない。一瞬のうちに過ぎていくその時間の中でたくさんのことが起きて、つながりなんて簡単に切れてかっこよくてなしさを知っている。たった一年なんて離れるには十分な時間だ。わたしは、今の大好きな人たちと、離れずにいられるだろうか。会えなくても、関係は変わってしまっても、心は手の届く距離にいられるだろうか。

読み返すとやたらセンチメンタルで恥ずかしいけれど、帰り道なぜだか涙が溢れ出てきたあの日のさみしさとか、取り返しのつかないことをしてしまったような焦燥感とか、あの時の感触を今でもしっかりと覚えている。いざ戻ってみると、拍子抜けするくらいに当たり前みたいにその空気に馴染んでいる自分がいて、メンバーも雰囲気もまったく違うのにそれでも同じ安心感の中にいられることをすごくありがたく思っています。

 

あとは、相も変わらず本を読んで漫画を読んで映画を見て音楽を聴いている。それだけで何度だって新しい感動に日々出会えることがうれしい。特にこの夏は漫画をたくさん読んだ。

ハイキュー!! 40 (ジャンプコミックス)

ハイキュー!! 40 (ジャンプコミックス)

 

いつだってわたしのこころのど真ん中を射抜いてくるのは『ハイキュー!!』なのです。物語を追いかける上で、いつかいつだって来ることはわかっている終わりというものの始まりにすでに泣いています。わたしにできることは最後まで強い気持ち・愛で受け止めることと応援することだけなので(単行本で買っているのに耐え切れずよく「ハイキュー 今週」でエゴサしてしまう罪を犯しながら)覚悟を決めて追いかけている。

完結後数週間は虚無と化す自分がありありと見えるけど膝をつかずに生きていこうと思う。仲間が重荷だったことがあるか。今巻も抜群によかった。超能力も魔球もない正真正銘生身の彼らの言葉・プレーひとつひとつがわたしのサビなのです。 

アオアシ(17) (ビッグコミックス)
 
モブサイコ100(16) (裏少年サンデーコミックス)

モブサイコ100(16) (裏少年サンデーコミックス)

 
進撃の巨人(30) (講談社コミックス)

進撃の巨人(30) (講談社コミックス)

 
ゴールデンカムイ 19 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 19 (ヤングジャンプコミックス)

 

最近読んで面白かったもの。少年ジャンプで育ってきた人間なのでやはりTHE 少年漫画に弱い節がある。『鬼滅の刃』も一応読んでいるけれど、かわいい絵柄でガンガン人が死んでいくので心が追いつけていない。 

六本木でやっていた「進撃の巨人展 FINAL」、チケットが高くて恐る恐る行ったけれど、価格に値する素晴らしさだった。ラストスパートの伏線回収の出来によってこの作品の評価は大きく影響されると思うけれど、どちらにせよ何十年後かの世界で手塚治虫作品並みに語られる傑作であることは間違いないと思っている。形而上的なこの世界の不条理や善悪を、物語というものを通して確かな痛みとして現実に落とし込んでいる。胸をえぐる哲学。純粋な気持ちではやく最終回を読みたいと思える漫画というのはやはり名作であると思う。著者インタビューの狂気っぷりもよかった。

わたしがこれまで読んできた漫画からすると、かなり異色だった『モブサイコ100』も、がっつり素晴らしかった。絵の平易さが奥深いメッセージをシンプルに放ってくる。泣きながら最終巻を読んで、満たされた気持ちで閉じた。

天使なんかじゃない 完全版全4巻 完結セット (愛蔵版コミックス)

天使なんかじゃない 完全版全4巻 完結セット (愛蔵版コミックス)

 

この夏に通して読んだ『天使なんかじゃない』はマリリンの凛とした強さと可憐さ、完全に当て馬だったけれど馬鹿みたいにまっすぐで眩しいケン、ライバルかと思いきやどこまでも美しく自分の道を歩き続けるマキちゃん、好きな人のことを心から好きなしのちゃん…みんなみんな愛おしかった。主人公の2人ももちろんだけれど、マリリンと翠の深まっていく友情にやはり胸を打たれてしまう。恋をしたら、情けなくてみっともないこと、いっぱいあるよ。天ないは永遠の青春だ!出会えてよかった。