月に1冊、未知なる本を読もうという試み(2024年7〜9月)

2024年は未知なる本を月に1冊読もうという試み、その名も「未知本チャレンジ」第三弾。7〜9月は忙しくて本を選ぶ余裕も腰を据えて読む余裕もあまりなかったというのが正直なところなのだが、かろうじて虫の息で生き延びております!

 

過去の記録

意気揚々と走り出した第一弾(1〜3月)↓

aurorai.hatenablog.com

1冊だけ異様に熱く語りすぎている第二弾(4〜6月)

aurorai.hatenablog.com

 

7月:【統計】大川丈彦『マンガでわかる統計学

今月の未知本

会社の尊敬する大先輩におすすめしてもらって購入したものの、数年間本棚でぴくりとも動かなかった遺物。今年に入って、ついに重すぎる腰を上げて何度かトライしたものの、意味不明すぎて途中で挫折、というのを3セットくらい繰り返して、7月にようやく読破することができました。長かった…。

感想

仕事的にも社会人としても、統計の知識は絶対あった方がいいよな〜〜とは薄々感じていたものの、大学は文系の中でも群を抜く人文系学部にいたので、お恥ずかしながら数字と向き合ったのは高校が最後。この本は、そんな「分散?標準偏差?なんか聞いたことあるかも…いやないかも…」レベルの阿呆にも優しかった。

著書の大上先生の説明もさることながら、全編を通して伴走してくれる森皆ねじ子さんのマンガ図解がわかりやすすぎて頭が下がる。自分で手を動かして計算するのではなくて、基礎の基礎を概説するよ、という本なので、スタートラインの遥か後ろでベンチを温めているだけのわたしにぴったりでありがたい。統計なるものの輪郭がなんとなく朧げに見えてきた感があるので(本当か?)この勢いに乗って、統計検定とか勉強してみようかな〜〜と思ったり思わなかったりしている。

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8月:【詩集】谷川俊太郎『すてきなひとりぼっち』

今月の未知本

装丁とタイトルに一目惚れして購入。正直、谷川俊太郎も詩も全然未知ではないのだが、もしかしたら紙の本で詩集を通しで読んだことはなかったかも…?と、無理矢理に未知本認定。

そういえば、この世にはたくさんの魅力的な名前のついた本があるけれども、長い間ずっと、谷川俊太郎さんの詩集『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』というタイトルが潔い装丁とともに脳にこびりついていて、折に触れてその冷たい石みたいな美しさを思い浮かべてはぼうっとする(詩集はまだ読んでいない)

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感想

この時期は仕事が忙しくて毎日働いて寝るだけの生活を送っていたので、小説を読む元気も時間もなく、ベッドのなか束の間にこの詩集を数篇めくっては眠りに落ちる生活をしていたのだが、それは今思うととても贅沢だった。

なんて赤裸々で、感傷的で、力強い詩を書くんだろう!その言葉の凄まじさに、あらためて毎晩震えていたし、励まされてもいた。鋭くて、熱い血が流れている。やっぱり詩は文字通り余白あっての詩だと思うので、紙の本で読むのがいいなあと再確認した。好きな一節にたくさん出会ったけど、わたしは昔から「さようなら」という詩が寂しいのにきらめいている感じがして無性に気に入っている。

さようなら

ぼくもういかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない
どこへいくのかわからないけど
さくらなみきのしたをとおって
おおどおりをしんごうでわたって
いつもながめてるやまをめじるしに
ひとりでいかなきゃなんない
どうしてなのかしらないけど
おかあさんごめんなさい
おとうさんにやさしくしてあげて
ぼくすききらいいわずになんでもたべる
ほんもいまよりたくさんよむとおもう
よるになったらほしをみる
ひるはいろんなひととはなしをする
そしてきっといちばんすきなものをみつける
みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる
だからとおくにいてもさびしくないよ
ぼくもういかなきゃなんない

 

9月:【バッタ】前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

今月の未知本

この世で一番好きと言っても過言ではないくらい、愛してやまない神楽坂はかもめブックスで出会った本。そういえば数年前にどこの本屋でもこの衝撃的なビジュアル見かけたな〜〜と軽い気持ちで序章を読んでみたら、面白すぎてそのまま購入し、あれよあれよと2日くらいで読み切ってしまった。

感想

果たしてこれまで、こんなに面白い新書があっただろうか?!バッタが好きすぎる著者の体当たりバッタ研究記。正直研究内容は割とどうでもいいくらい、とにかく著書の人生を懸けた、山あり谷ありの珍道中が面白すぎて、娯楽の読書体験としてとんでもなく楽しかった。

わたしは高野秀行さんとか上出遼平さんとか、世界の辺境に体当たりで飛び込んでゆく猛者たちの奮闘記を(安全な場所でぬくぬくと)楽しませていただくのが大好きなので、そのレパートリーに前野氏が盛大な拍手で迎え入れられてしまった。なんでそういうジャンルが好きなのかは自分でも説明がつかないのだが、思い返すと大学入学時のエッセイも青木保氏の『異文化理解』や、実際にタイで僧修行をして還俗するまでを記したフィールドワーク記『タイの僧院にて』などを基にしていたので、文化人類学的なテーマに興味関心が強いのかもしれない。

 

昆虫に関する知識が皆無すぎて、あの小さなバッタがアフリカで大発生して食糧危機を引き起こしていることや、それほどのパワーや移動能力を持っている(てか飛べたの?!)ということすら知らなかったので、そういう点でも勉強になったし、確実に未知なる世界への扉だった。世の中には面白い人がたくさんいるなあ。

今は念願の続編『バッタを倒すぜアフリカへ』を小躍りしながら読み進めています!

 

総括

未知なる世界に出会うという趣旨からすると、8月の手抜き加減は否めないものの、「統計」と「バッタ」という別種の未知との遭遇のおかげでトータルでプラマイかなりプラスになっている。

どれも異なる方向にそれぞれ素晴らしい3冊だったし、その3点の距離を嬉しく思う。