月に1冊、未知なる本を読もうという試み(2024年4〜6月)

2024年からはじめた、未知なる本を月に1冊読もうという試み、略して「未知本チャレンジ」、おかげさまで4〜6月も順調に続いたので第2四半期分です。

 

1〜3月分はこちら↓

aurorai.hatenablog.com

 

4月:【脳科学池谷裕二『脳はなにげに不公平』

今月の未知本

実家のトイレに置いてあったものを、そのまま拝借した。脳の最新の発見や論文などをさらりと紹介する小噺的なエッセイが大量に収録されている。脳とか脳科学の本はそういえばまったく読んだことがないので、しっかりと未知本認定。

 

感想

THE・実家のトイレに置いてあった本、という感じで、めちゃくちゃ軽かった。どのトピックも興味深いのだが、新聞連載ということでいかんせん短くさらりとしているので、「へえ〜」と思って、そのまま忘れる…というのを何十篇分も繰り返した。

どれか1テーマを深堀していけばまた違うと思うのだけれど、大量の話題にソフトタッチしていくので、あっさり読んであっさり終わる。これはこれで新しい。1〜3月に割と重めの本たちと格闘していた分、滞りなくするすると読み通せる軽さが際立った。

 

何のトピックがあったかも割と忘れてしまったうえにもう手元に本がないのだが、そのなかでも印象に残った話(うろ覚え):

  • 人間のエネルギーのアウトプットは、排泄や運動や呼吸など色々な方法があるが、インプットは”食”しかない。だからダイエットは、シンプルに摂取エネルギーを抑えて消費エネルギーを増やせば痩せる。
    • 全然本筋とは関係ない&当たり前の話なのだが、万年ダイエッター(食事制限:希望せず)の胸に刺さった。
  • アウトプットすることで心の不安定さを解消できる
    • 自分の実生活でも、インプット過多の時はもやもやした感情が心身の内側にこもったような閉塞感的な重さを感じるので、かなり腑に落ちた。

 

5月:【PR】高木徹『戦争広告代理店』

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今月の未知本

ずっと存在は知っていて、ずっと気になっていた本。ボスニア紛争で、ボスニア・ヘルツェゴビナ側が雇ったアメリカのPR企業が、どのように印象操作して世論を動かし、セルビアを悪者に仕立て上げたのか、というドキュメンタリー。

情報を扱う仕事をしている者の矜持としても、戦争が遠くとも他人事ではないものになってしまったこの時代を生きる一地球市民としても、(怖いけど)やはり読まねば…!と決意して臨んだ。

 

感想

いや〜〜〜すごかった。恐ろしいけれど、ドキュメンタリーとして大傑作で、最後まで前のめりで読み切った。もちろんこの本がPRを軸に語っているだけでその他たくさんの要因も大きいということは理解しているのだけど、それでもジム・ハーフという超敏腕PRマンの手によって、世界が何を知って、何を思い、どう声を上げられるかが決定され、それが戦局までも変えてしまった。

自陣に都合の良い情報は、より魅力的に仕立て上げて、大きな声で、ここぞというタイミングで大々的に流布し、一方、都合の悪い情報は世の中に知られることを徹底的に阻止する。相手にとって都合の悪いことは、とことん利用する。その連鎖で、決してデマを流したわけではなくとも(流しているPR会社もたくさんあると思うが)、白か黒かなんていともあっさりとひっくり返ってしまう。

 

なんというか、信じたいものを信じる、どうしても周りの声や状況に流されるという人間の特性と、戦争のような大きな世の中のうねりに対して情報と世論の持つ巨大なパワーを、それを知り尽くしている人間に巧みに利用されると、本当にとんでもないことになってしまうんだな〜〜と思った。

それを利用する側の人間は、「それが仕事だから」と思ってやっているのだろうが、情報は不可逆で、誤った情報やそれが引き起こすたくさんの悲劇に誰も責任を取ることはできない。何より、この情報戦は戦場では起きていないこと、なんなら戦地でもないアメリカのオフィスで起きていることが、本当〜〜に皮肉だよなと思う。

 

もしジム・ハーフがセルビア側についていたら、世界史も、それに関連する途方もない数の人々の運命も、まったく違っていたかもしれない。でもそれっていつでもどこでも起きている当たり前の話。微力ではあるが、わたし自身もメディアと情報がいかにこの世界を動かしうるか、その功罪と自分の手が及ばなくなるほどの影響力を常に持ちうるということに自覚的でいなければと強く思った。

 

6月:【屋久島】大石始『南洋のソングライン 幻の屋久島古謡を追って』

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今月の未知本

屋久島のお土産屋さんでふと惹かれて購入。「まつばんだ」という、今はもう歌える人はほぼ存在しない幻の古謡(琉球調)がどこから来たのか?ということを、現地でのフィールドワークやインタビューを通して追いかける、という本。ロマン。

 

感想

完全にわたしの興味関心と知的好奇心の欠如の問題だと思うのだが、つまらなくてすぐ眠くなってしまい、全然読み進められず読了までに1ヶ月かかってしまった。色んな人に話を聞いたり、島に行ったり、東京に戻ったり、といった描写がつぶさに続くのだが、内容としては何も進まないので…。現地で追いかける方は楽しいと思う。

とはいえ、自分も訪れた場所や街を、筆者たちが訪れて何を話して、何を思ったのかを知ったり、その風景を想像するのは楽しかった。屋久島旅行の追体験をしていた。

その時の4日間の屋久島滞在では、島に生きる人と関わることはもちろん、現地の人の姿を見かけることすら全然なかったので、自分が踏んだ地の歴史や文化の流れ、そこに住んでいる人々の面影を知れたのはしみじみ嬉しかった。

 

総括

感想の分量からあからさまかもしれないが、今期はとにかく『戦争広告代理店』が凄かった。他はあんまり刺さらなかったけれども、どの本も自分にとっての未知度はかなり高かったので、チャレンジの趣旨としては100点満点。

第3四半期は、軽すぎず、重すぎないものをもっと開拓していきたい所存!