今月のあれこれ
毎年梅雨の記憶がない
生来の記憶力のなさのせいなのか、毎年まったく梅雨の記憶がない。なんなら今年の梅雨もあまり把握できていない。というかいつ終わったの?梅雨の認識が虚構すぎて、学校やニュースで知らなければ、梅雨という現象に気付かないまま人生を終えていた自信がある。

唯一思い出せるのは、重苦しい大雨の日に出社する羽目になり、UNIQLOのシャカシャカの上着に、UNIQLOのシャカシャカのズボン、ゴアテックスの登山靴という自分なりに最低限雨に配慮した服装で出かけたところ、偶然道中で遭遇したしばらくぶりの同期に食い気味に「いまから山行くの?!」と尋ねられたこと。いいえ、あなたと同じ会社に向かっています。すごいびっくりした顔をしていたが、こちらの方がびっくりである。
そんな折に偶然Instagramの広告でFIGAROの特集記事に当たり、川上未映子さん素敵だなあ〜〜と読んでいたら、服装についてのかっこよすぎる言葉にぐうの音も出なかった。
同時に、装うことは、自分に触れることでもある。自分のいちばん外側にある皮膚のようなもので、服とは体の一部なんじゃないかと思える時があるのです。まとった服はある場面において挨拶よりも、自己紹介よりも早く、瞬間的に『私』という人間を他者へと語る何かになりえる。
自己紹介よりも早く、一瞬で「平日登山」を他者に語ってしまう我が私服。しかも大雨という登山日和の対極の日に、登山を彷彿させるほどの説得力とは…?もはや服装だけじゃなくてわたしの生き様の問題という説もある。なんだか思いもよらず「ファッションとは」という命題を突きつけられた梅雨でした。
祖母、衰えを知らぬまま卒寿!
祖母とは小学生くらいの時から一緒に住んでいるから変化に気付きにくいところもあるかもしれないが、それにしても衰えを知らなさすぎる。
近年では私財を投じて趣味の作品集を配布用に自費出版したうえに(血筋)、どこで用意したのかめちゃくちゃそれっぽいアー写までしれっと撮っていて笑わせてくれた。その名も題して『魅せられて』。あとたぶんガーデニングの才能があり、毎年庭に薔薇を咲き誇らせまくっている。
最近はNetflixのアカウントも作ってもらったらしく、深夜に起こさないようにそっと部屋の前を通り過ぎたら中から音がして、大丈夫か?!と覗いたところ『愛の不時着』が止まらず夜なべで一気見している祖母がいた。OLなのか?
そんな祖母の卒寿&叔母も還暦!ということで、大きめの親族集団で週末旅行 in 河口湖。合唱好きが高じて、近年ではNHKの合唱コンクールを各校メモを取りながら厳しい目で採点している自宅審査員こと祖母の「みんなに天使の歌声を聴かせたい」というたっての希望で、ウィーン合唱団のコンサートを聴きに行った。


寝てしまわないかが唯一の懸念だったのだが、開始3分くらいで叔母と母が寝出したのを目撃して驚いて目が覚めた。自分より動揺している人を見ると落ち着くやつの逆。
これがなかなか色んな意味で愉快なステージで、少年たちの合唱はたしかに美しいのだが、合間で顔を合わせてにやにやしていたり、不貞腐れて全然歌ってない子がいたり、上手く行った時にはお辞儀の時にこっそりグータッチし合っている子がいたり、想定外に少年たちがちゃんと少年をしていて可愛かった。そして最後には河口湖の地元の小学生と一緒に合唱させることで、あの子たちめっちゃ上手かったんだ…という歴然とした差に気付かせるという残酷な演出もあった。元オペラ歌手の叔母は、誰かが音を外すたびに毎回首を傾げるという嫌なタイプの見方をしていた。
ちなみに、河口湖のステラシアターは屋根が開くようになっている半野外ステージなのだが、遥か頭上の隙間からステージ上のひとりの少年に虫が襲いかかり、合唱中にヒッッと叫んで取り乱すというハプニングがあったのだが、実は時を遡ること15分ほど前、誰も知る由もなく、観客席のわたしもまったく同じ目に遭っていた。どこか上空から顔のど真ん中に髪の毛的な細い糸がぺとっと垂れて張り付いたと思ったら、それを伝って蜘蛛が顔面に落ちてくるという初体験の珍事を超えて惨事を前に、一言も声を漏らさなかった自分を褒めてあげたい。いくら状況が状況とはいえ、わたしが観客席で突然その少年のように叫んで取り乱したら、かなり真剣に出禁の可能性があった。
そんなこんなで様々な波紋を呼んだウィーン合唱少年団、「よかった」だけではない様々な角度の感想があふれる面白い体験だった。終わってから当の祖母も「もうちょっとよかったはずなんだけど…」とこぼしていたらしくてウケる。
いとこが描いて準備してくれた祖母の似顔絵の色紙、素晴らしい仕上がり!周りにひとりずつメッセージを書いて渡した。すごく喜んでくれた。

本人はその出来栄えにふさわしい十分な自信と自負により、褒められ待ちを超えて「かなり褒めてくれないと納得できないよ?見る準備できてる?」と至るところで褒めハラを巻き散らかしていたところ、そんなことはつゆ知らず我が家の最強兵器・甘い&しょっぱいの無限列車こと我が両親が登場。「え〜〜〜!すごい!!!すごすぎる!!すっごい上手!!!」と絵に描いたようなハッピーリアクションが止まらない母と、「これ…本当にYが描いたのか…?AIじゃないのか…?本当に…?」「Y、今すぐこういう仕事に転職した方がいいんじゃないか…?」と本人は至って真剣なのが逆にツボな父による、予想を遥かに超えてくる賛辞の両フックが5分ほど続き、最終的にいとこは感極まって泣いていた。鬼滅で退治される時の鬼。褒めは渇いた心を救う。
ちなみにお祝い旅だったのでちょっといいホテルに泊まったのだが、夜ごはんのバイキングがちょっと食べたことないくらいのクオリティで美味しすぎてやばかった。なんかもう胃に上限があることが真剣に悔しかった。


ステーキも食べ放題で、開始早々「ステーキ何枚食べられるかな…挑みたいな…」と武者震いしていたところ、満面の笑顔で兄に「光、最後まで一緒に行くよ」と肩を叩かれてあまりにもシンメだった。同じ血が通いすぎている。なんか、最初から最後までずっとわちゃわちゃとした賑やかな旅で、温かい時間だった。
夏だ!家族旅行 in 大阪万博&京都
ずっこけ一座によるハプニングだらけの珍道中。最終日はクライマックスに相応しく、おばちゃんコーデで灼熱の京都をひとり北に南にチャリで飛ばしまくった。万博、行けてよかったな〜〜。
古代DNA展の最終日に滑り込み

友達が誘ってくれて、あまり普段触れないジャンルの展示へ!最終日に行ったのだが、空いているだろうな〜〜という軽率な予想を裏切る人・人・人の大混雑。みんなこんなに古代人に興味あるんだ…と現代人にも興味津々。
DNAから古代の人間の顔を復元しているのが面白かった。あんまり今の人間と大差ない。昔の人は虫歯にめちゃくちゃ苦しんでいた、という情報に大いに励まされた。最近わたしも歯に苦しまされる日々でして…時代を超えて握手…。
今月の食事情
きつねうどんに目覚める
人生で一度もどん兵衛を食べたことがなかったのだが、会社で偶然プレミアムなどん兵衛をいただき、なんの気なしに食べてみたら、あらびっくり。どん兵衛ってこんなに美味しかったの?もっと早く教えてほしかったよ…。
そこから、偶然Twitterで「テーブルマークの丹念のうどんがおいしすぎてやばい」という情報を見かけて、そういえば結構昔に冷凍うどん買ったなあ…と冷凍庫を漁ってみたら、まさに古の丹念のうどんが発掘され、試しに食べてみたらまあ美味い。あまりに美味しすぎて、Googleで「丹念 うどん 美味しすぎる」という馬鹿みたいな検索をしてしまった(ちゃんとみんなそう思ってた)
そしてどん兵衛の後味に背中を押してもらい、初めて自らの手で油揚げをきつねに変身させるという偉業を達成。

どこかの優しいギャルの方がUPしてくださっている「♡」に溢れた読んでいるだけで楽しいアゲバイブスのレシピを活用させていただいてる。甘めの味付けでこれまた美味しい。こうしてたくさんの偶然ときつねの思し召しに導かれ、我が家にどん兵衛が生まれた。

お揚げは面倒なのでたまにしか作らないが、今でもうどんライフは続いている。LOVE・うどん。外食で食べるなら蕎麦の方が好きだけど、家で作るのは絶対にうどんの方が美味しい。なんだかんだどんなうどんにも豚しゃぶをのせてしまうわたくし。別に「合うから」とかではない。ただただ豚しゃぶが好きだから。
ずっと食べたかったタコス
去年突然「島」モチベが溢れ出したのと同様、最近突如として「タコス」欲が芽生えていたのだが、何度かふいにされながらもようやく気になっていた原宿のお店に行くことができた。メキシコに行ったことはないけれど、溢れ出るローカル感。


がっつりボリューミーで、オイルも味のパンチも効いて、両手を汚しながらむしゃむしゃ食べるのがジャンキーな喜びだった。そしてこの夏の暑い暑い日に、瓶の冷えたコーラの喉越しがなんたる美味しさよ!


ちなみにこの日は不運続きのわたしのために友だちと明治神宮に参拝に行った。効果のほどは不明だが、おみくじで「人がなんと言おうと自分の心に恥ずべきものがなければその道を進めばええんや」的なことを詠んだ唄が当たった。タコスの味とともに胸に刻もう。
今月のエンタメ
刑事ワシントン・ポーシリーズ/M・W・クレイヴン

海外ミステリはほぼ読んだことがなかったのだが、評判を聞いてどれどれと手に取ってみたところ、ま〜〜前情報に違わぬ面白さで、1作目こそ翻訳文やカタカナの人名に慣れず1週間くらいかかったものの、2作目は3日、3作目は2日くらいで読み切ってしまったほどの抗えない魔力。なんなら通勤中や会社でランチを取る時も片時も離さず読み耽っていた。先が気になって眠れない!という、ひさしぶりのアドレナリン読書。
一番有名な第1作。ハードボイルドな語り口と鮮やかな展開にすげ〜〜とひれ伏すと共に、物語の切ない余韻が離れなかった。どの作品にも言えることだけど、イギリスの作家だけあって至るところでめちゃくちゃ皮肉が効いていて、額面通りに受け取って「?」となって読み直す時間がある。皮肉にも読解力がいる。
シリーズの中で一番グロいと思われるが、耐性皆無なわたしでも全然耐えられるタイプの気持ち悪さの第2作。主人公が優秀すぎる。サイコパスシェフと戦うぜ!の巻。
正体不明の魅惑的な敵があらわれる、007とかMIシリーズ好きなら(つまりわたし)わくわくしてしまう第3作。ネタバレになるので書けないがめちゃくちゃ辛い気持ちになる部分があったなあ。個人的にはオチにいまいち納得しきれない部分もあるものの、相変わらず面白い。
次作も買ってあるのだが、読むのがもったいなくて一旦おあずけしているところ。めちゃくちゃ映像化に向いてそうなシリーズで、主人公のワシントン・ポーは見た目の描写が少ないこともあり、どんな風貌かまったく想像がつかないのだが、相棒で友人のティリー・ブラッドショー(超絶IQでナードな天才)はぜひシアーシャ・ローナンちゃんにやってほしい。
Netflixドラマ『特別捜査部Q』

ワシントン・ポーシリーズにハートを鷲掴みにされているので、完全にその影響もあって見始めたドラマ。これがまためちゃくちゃ面白くて止まらない。3日くらいで見終わってしまった。監督・脚本ともに『クイーンズ・ギャンビット』のスコット・フランク。全体的に暗くてシリアスなトーンなのだが、信じられないくらいセンスがいい。どうなっているんだ。
主人公はかなり嫌な奴で、ずっと嫌な奴なのだが、最終話くらいまでくればそれもようやく、ちょっとだけ可愛く見えてくる。ほぼすべての発言にFワードが出現するという現代ではまあ見ない強硬姿勢、もはや面白い。京都人もびっくりの重量級の皮肉の嵐に、イギリスって本当にこうなん…?と恐れ入っている。わたしはこの国では生きていけないかもしれない。
それでも途中で離脱しないのは、周囲の登場人物が魅力的なこともあるが、何より有無を言わせぬストーリーの強度。めちゃくちゃ先が気になるんだもん。腕力で次のエピソードへ連行されてしまう。は〜〜ひさしぶりにのめり込んで一気見して、毎日楽しかった。続編、絶対作ってほしい!
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