月に1冊、未知なる本を読もうという試み(2024年10〜12月)

2024年の目標として掲げていた、月に1冊未知なる本を読もうという試み、その名も「未知本チャレンジ」ついにファイナル。最後の3ヶ月は、10月前半は有閑階級(仕事が落ち着いていて暇を謳歌しまくり)、後半は受験生(資格取得に向けて猛勉強)、11月は東奔西走でたくさんの人や物に巡り合い、12月は超労働者階級(忙しすぎて三途の川が見えそうだった)、と生まれ直すようにめくるめく日々だったけれど、それぞれに思うところと傍らに選んだ本があった。無事12冊走り切ったぞ〜〜!ということで、1年間の振り返りも兼ねた記録。

 

10月:【AI・G検定】『深層学習教科書 ディープラーニング G検定公式テキスト』 

今月の未知本

昨今の革命的な人工知能の進化と同じ時代を生きながら、わたしときたら阿呆な顔してAIが何なのかすらいまだになーんもわかんない!という無知状態を少しでも脱するべく、ミーハーな知的好奇心で受けたG検定の公式テキスト。

テキストを読書扱いしていいのか?いいのです。ほぼ読み物だったうえに、未知度でいえばあまりに飛び抜けすぎて大気圏を超えていたので。

 

感想

格闘の記録を書き連ねていたらあまりに長くなったので別のエントリにしました。

aurorai.hatenablog.com

読んだ、というより闘った、という方がしっくりくるほどに、意味が分からなさすぎて5分に1回は叫び出しそうになる新しい敵だった。何回同じ行を読んでも意味が分からなくてイライラして、説明の分かりづらさにイライラして、自分の無知さや理解の悪さにイライラして、狂いそうになりながら読了。

仕事でも日常生活でも叫びたくなる衝動に駆られることはほぼないので、こんなに揺さぶってくるなんて面白えじゃん…という新しくて懐かしい感覚だった。イライラ地獄は辛かったけれど、ああでもないこうでもないと未知に挑むこの感覚と経験こそわたしがまさに欲しかったものなのかもしれない。

巷でよく聞く「何かを学ぶということは世界の解像度が上がること」という言葉が好きですごく実感を持っているのだけれど、勉強する前のわたしと後のわたしが見えている世界は当たり前だけど全然違っている。何かを新しく学ぶのって楽しいな〜〜!とあらためて気付くことができた。

 

11月:【地方出身者の東京】雨宮まみ『東京を生きる』 

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今月の未知本

雨宮まみさんという存在は大学生の頃から知っていて、「東京を生きる」という地方出身者にドンズバに刺さるタイトルも含めて、苛烈な感性と生き様に憧れるような手を伸ばすのが恐ろしいような、なんというかお名前を聞くだけで少しハッとする、ずっと気になる存在だった。

読みどきを失っていた、というよりは迎えられていなかった、というのが正しい気がするのだけれど(読みどきを間違えて真正面から食らったら立ち直れなさそうなので)、そうこうしているうちにご本人が亡くなってしまい、それによってさらに緊張感を持った一冊になった。最近ふとした時にこの本を思い出し、もう今なら大丈夫かも、と思えたので十年越しに読みました。

 

感想

なんというか、読み進める手は止まらないのに、読めば読むほど息が詰まって苦しかった。東京生まれの人は東京を生きるという本は書かないと思う。地元から逃げ出したという後ろめたさと、東京の終わりのない欲望と消費の連鎖、どこまで行けば満たされるのだろうという不安、どこまで行っても何もない、という焦燥感。

特にわたしのような地方出身&東京在住の20-30代女性には、目を逸らしたくてもどこか身の覚えのある感覚ばかりで、どんなに違うタイプの違うステージで生きている人だと切り離そうとしたって無関係ではいられないと思う。メンタルの調子が良い時に読まないとかなり持っていかれてしまうので注意が必要(20代前半とかに読まなくて本当によかった)

すでに亡くなられていることを伏せたとしても、こんな身ひとつで傷だらけで、それを丸裸に曝け出して生きていて、こちらの方が痛くて痛くて、こんな苛烈な感性では生きていけないよ!と泣きたくなる。ルイーズ・ブルジョワ展でも同じことを感じた。自分の現在進行形の傷やトラウマを全部世界に曝け出して、表現している人の作品だけが持つきらめきとヒリヒリと刺すような痛み。でも宝石みたいに最高にきらきらと輝いていた。欲望と渇望の人。

 

12月:【ジャズ】村上春樹『デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしき世界』 

今月の未知本

幼馴染が東京においしい果物を贈ってくれたうえに、帰省時に行きつけのジャズバーに連れてってくれるというので、お礼として選んだ本。ジャズとは本当に何の縁もない人生なので、予習を兼ねてわたしが先に読んでから渡すという近しい間柄でないと許されない所業に出た。一目惚れしてしまうような素敵な装丁で、村上春樹がジャズレコードとそのデザインについて語る、なんて読まずにはいられない。人に贈る本はどんなにいい本であっても装丁も美しくあってほしいし、できれば文庫ではなくて単行本を選びたいと思っている。

 

感想

人が好きなものについて語るものを読むのは楽しい。楽器と代表的なジャズプレイヤーごとに章立てされているので、デヴィッド・ストーン・マーティンによるレコードデザインを目で楽しみつつ、村上春樹による各ジャズプレイヤーの代表作や作品の評価などの解説をあわせて読むことができて、ジャズを何も知らない人間にとっても分かりやすくて面白かった。

あらためて村上春樹の知識の広さ・深さに唸るばかり。さらに、趣味のジャズレコード収集に対して「1枚のレコードに対して日本円で5,000円以上、アメリカドルで50$以上は出さないように自分でルールを決めている(お金を出せばそれは何でも買えるけど、それでは探し歩く楽しみも際限もないから)」的なことを言っていて惚れ惚れしてしまった。とんでもない財産があるだろうに、そのぶれない姿勢!かっこよすぎるぜ…。

平日仕事が終わって寝る前の少しの時間で、各章のジャズプレイヤーの演奏を流しながら(Apple Musicだけど)、レコードジャケットを眺めて村上春樹の文章を読むというあまりにも贅沢な時間。豊かすぎて「今めっちゃ豊かだな…」と自認していた。

 

未知本チャレンジ2024、無事完走!

ということで、月に1冊未知なる本を読もうという試み、題して「未知本チャレンジ2024」、無事完走したぞ〜〜!読んだジャンル&本一覧はこんな感じ。

  1. 暇・退屈論(國分功一郎『暇と退屈の倫理学』
  2. 決済(ゴットフリート・レイブラント、ナターシャ・デ・テラン『教養としての決済』
  3. 自炊(土井善晴『一汁一菜で良いという提案』
  4. 脳科学池谷裕二『脳はなにげに不公平』
  5. PR(高木徹『戦争広告代理店』
  6. 屋久島(大石始『南洋のソングライン 幻の屋久島古謡を追って』
  7. 統計(大川丈彦『マンガでわかる統計学』
  8. 詩集(谷川俊太郎『すてきなひとりぼっち』
  9. バッタ(前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』
  10. AI・G検定(『深層学習教科書 ディープラーニング G検定公式テキスト
  11. 地方出身者の東京(雨宮まみ『東京を生きる』
  12. ジャズ(村上春樹『デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしき世界』

この未知本チャレンジを始めたのは、社会人年次を重ねるごとに精神衛生的に読める本、見れる映画が限られてきて、どんどん自分の幅が狭まっている感覚と、自分の手の届く範囲のものしか楽しめなくなっていることの危機感が出発点だった。その時のわたしは、1年後にこんなラインナップを目にするなんて予想だにしていなかったねえ。

その時々で興味を持ったジャンルや読みたい本が瞬発的に立ち現れることもあれば、ずっと読みたかったけれど長い時間をかけて読みどきを醸成していたもの、旅先で偶然手にした一冊もあった。その時にしか出会えない本と、読みたいという衝動を逃さないように両手いっぱいで前のめりで捕まえに行った、充実した1年間だったな〜〜!

 

特に印象に残っている本たちを簡単に。

 

おまけ:2025年に開拓したい未知本ジャンル

個人的にかなり良い取り組みだったので、興味関心と衝動に従って、2025年も続投したい所存。ただ、自分の中に浮かんでくる未知はそこまで未知では気がするので、もっと遠いところからぽーんとボールを投げ入れられるような出会いをいつも待っている。みなさんのおすすめの未知本、ぜひぜひ教えてください。

  • アート・美学(最近ようやく美術館に行けるくらいに精神が本来の軌道に戻ってきたので)
  • 歴史(「銃、病原菌、鉄」とか「サピエンス全史」とか読みたい、後者は上巻で止まったまま数年経つ)
  • 仏像(みうらじゅんさんの本で読みたい)
  • 断捨離・整理整頓系(土井先生がわたしの食生活を変えたように、誰かわたしの片付けられない&物持ちがよすぎて何も手放せないという悪癖を変えてくれ〜〜!)

 

2024年1〜9月のエントリはこちら

aurorai.hatenablog.com

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