年末あたりからふと「海で朝日を見たい」という根源的欲求がごく内側から湧き上がって離れなくなってしまった!昨年は突然「島を旅行したい」という衝動に天啓のように打たれていくつかの島を渡り歩いたのだが、今年はまたしても唐突に、空気の澄み渡った朝に水平線を朝日が静かに昇る心象風景を夢見るというロマンティックモードに。年々見たいものや欲するものが少年のようになっている。わたしは一体どこに向かおうとしているのでしょう…。
自転車で海に昇る朝日を見に行く
ということで2月のある土曜日、脅威の4時過ぎ起床を果たし、まだ真っ暗闇のなか家を飛び出して、シャコシャコと自転車を漕いで、ゆくぞ海へ!(何度でも伝えたい、こういうとき軽率に「鶴太郎並のはやさ」と言いたくなるけど鶴太郎氏は夜23時起床)
みんなが寝静まっている時に動き出す時のソワソワとした高揚感って特別だよねえ。夜のドライブとか、朝の便に乗るために暗いなか空港に向かう時とか。おかげさまで頭は回らないけどアドレナリンがドバドバで眠気は飛んでいった。

そういえば、朝日を見に行くということは、朝日が出るまであたりは真っ暗なのだということをなぜか忘れていた。すれ違う人たちは、こんなに早くにどこに行くのだろう。外に出ていなくても、20-30戸くらいのマンションはたいてい1-2戸は(必ず!)電気がついていて、寝落ちたのか、はたまた朝まで起きているのか、鶴太郎氏には劣るくらいの早起きなのか。わたしはいつもなら何があっても絶対に寝ている時間だからこそ、人の生活が非常に気になる。とはいえ、外を歩く人や電気の灯った部屋の背景にどんなに素敵な、もしくは切実なストーリーがあったとして、誰にも頼まれていないのにこんな時間にわざわざ海までチャリで朝日を見に行く暇なアラサー女性は我々くらいであろう。
この日の日の出予定時間は6:20。その時間には海に着くように計画して、かなり冷え込むなか1時間以上とにかく漕いで漕いで漕いでいたところ、なんだか5:50頃から空が明るくなってきて焦る。まだ日の出まで30分くらいあるのに?!

日の出前・日の入り後のうっすら明るい状態の空を「薄明(はくめい)」と呼ぶらしい。日の出前も空が明るいこと、それを薄明という綺麗な名前で呼ぶこと、この歳になっても知らないことばかりだ!
予定通り(というかギリギリの)6:15頃に海に到着。1時間以上漕ぎ続けるのは楽ではなかったけれど、それを超えるくらい道中もずっと気持ちが良かったなあ。

そして6:20、特等席でようやく迎えることができたピンクに染まる海と空。

海も空もいつだってそこにあるのに、ただ日がのぼり、日が沈む、それだけのことがどうしたってこうも美しいのでしょう!だんだんと雲の合間から太陽が顔を見せる。

そしてその道筋が海面にくっきりと反射する。一番特別な時間、まさにモネの絵みたいな海面。この光景はほんの少しの時間で過ぎ去っていって、惜しみながら一部始終を見守った。

疲れと寒さで頭は回っていなかったけれど、飛び跳ねたいくらいに美しくて胸がいっぱいだった。我々はまだ海と空だけでこんなにも感動することができる!
もうちょっと太陽がのぼると、もっと空が明るくなって、目にあたたかいトロピカルな幸福感にひたひたに満たされた(これはiPhoneで撮った写真)

これまでの人生で見たなかで一番強烈だった朝日は、深夜2時だか3時集合というそれこそ鶴太郎氏に迫る脅威の旅程で挑んだグランドキャニオンで、史上最凶の睡魔に襲われながら車のなかから見た砂漠の日の出。自分でもどうにもならないほどの眠気で、こんなに大切な瞬間に意思に反して眠りに落ちてしまうジレンマと目に刺すような力強い朝日をセットで覚えている。


そして自転車で太陽を追いかけて思い出したのは、そのアメリカ旅行の時に沈みゆくアメリカンな夕陽を見ようとみんなで一斉に走ったこと。全然追いつけなかったけど。

どちらも今回付き合ってくれた友達と一緒に見ていた(なんならグランドキャニオンでどう頑張っても目を開けられない厄介なわたしを見捨てずに叩き起こし続けてくれた)。本当にありがたいかぎり。こうして思い出が重なっていく。
感無量で海を去ろうとしたら、後ろから「なんかやり残したことない?」と尋ねられ、振り返ったら友達が静かにHappy Birthdayのサングラスを装着していて大笑いしたww 朝日以上にこの日のハイライトすぎる。そういえば自分の誕生月なことを忘れていたけど、たくさん悩んでくれた末に、好みドンピシャのはちゃめちゃにかわいいプレゼントをいただいて喜びの舞🎶

そして気付けばお腹もぺこぺこで、ゆで太郎で沁み渡る朝ごはんを食べた。初めてのゆで太郎、朝日に照らされながらこれ以上ない哀愁顔で「ンメエ〜〜」と唸った。


そして、またもやチャリを漕ぎまくって豊洲に上陸し、朝9:00から念願の『ファーストキス』を見た。朝活界の最高峰すぎる。

夜明け前のすべてを背負って行くというこれ以上ない松村北斗へのアンサー。主演ふたりとも演技はもちろんのこと声がいいんだよなあ。坂元裕二節はところどころに感じつつ、それでいてさらりとした心地良い映画だった。
総括
前日夜、あまりの集合時間の早さに震えつつ「最高の土曜日になる予感」とメッセージを残していたところ、次の日友達も「嘘みたいだけど実はちょうど同じ時に同じ予感してた…」とのことで必然的に完璧な休日に認定🎶
最高の一日になる気がする!と思いながら眠りにつけるなんて、そんな幸せな予感を噛み締めている時点ですでに最高の休日は始まっているのである。そういえば前にも同じようなことを書いたなあと思っていたら、ちょうど1年前、同じ友達と高尾山→焼肉→銭湯というこの世の悦楽を詰め込んだかのような酒池肉林DAYを迎えていた。あれも素晴らしい休日だった。
どうしても、自然に触れたいとなると関東近郊に出なきゃ!じゃあ車借りなきゃ!とついつい遠くに目が向きがちで、腰が重くなったり予定を立てられなかったりするのだけど、視点を変えれば自然はそこらじゅうにあるのだよな〜〜ということをあらためて思い出した。朝日や朝焼けだって、別に海まで行かなくたってその気になれば毎朝見れる。ただ毎朝毎回見逃しているだけ。

ちなみに今回朝日を見た海は1月の日記でも書いた若洲海浜公園。前回は幼馴染の車ですいすい苦もなく連れて行ってもらったところに、今度は自分の足で(しかもめっちゃ朝から)はるばる来たのです。誰かに連れて行ってもらう海もいいけれど、自分の足で見に行く海もまたよいものだった。
手の届く範囲の素晴らしいものや楽しいことに、もっともっと敏感にアンテナを立てていくぞ!
